日本海に面する秋田県と山形県に跨る鳥海山。 標高2236mの麗峰は、四季の移り変わりが実に鮮やかで、秀麗無比と歌に歌われていることもうなずける。 この山の麓、秋田県側にあるのが矢島町。JR秋田駅より特急いなほに乗り山形方面へ。 途中、由利高原鉄道に乗り換え揺られること約1時間30分。 終着駅となる矢島駅の出口より鳥海山を正面に臨んだ右手に、天寿酒造は蔵を構えている。 創業190年の歴史を感じさせる厳格な趣である。
鳥海山の冬は美しくも厳しい。 降り積もった雪は、春になり溶けて、鳥海山のブナ林にてろ過される。 その水が長い時間をかけ、伏流水となり湧き出た軟水。 天寿酒米研究会産の手塩にかけた酒造好適米。花の花粉から作られた酵母。 これら使用して作られているのが、天寿や鳥海山などの銘酒であり蔵自慢の日本酒である。
かつて日本酒は地産地消が主流であり、地酒を飲むには現地へ足を運ばなければ、なかなか出会うことは出来なかった。 地酒はまさに、その土地の恵みである水、米、酵母に蔵人の努力と情熱が生み出した賜物である。 近年は地酒が作られる環境をワインに準えてテロワールと呼ぶ。 天寿酒造のテロワールにて醸し出された黄金色に輝く地酒は、海外でも高く評価され数々の賞を受賞している。
天寿酒造にて醸し出された日本酒を飲んで、究極のテロワールを感じてみてはどうだろうか。
「この酒で百歳まで美酒天寿」
~ あとがき ~
R1BY(※)、私が飲んだ秋田の酒蔵でお気に入りの蔵が2蔵ありました。そのうちの1蔵が今回コラムを書かせて頂いた天寿酒造さんです。
今年、なじみとなった酒屋さんの薦めで飲んでみて、芳醇な香り華やかで麗美な味わいに驚きました。
味については、飲まれる方により色々な表現があるので、あえて私見は書きませんでした。
私は物書きでも評論家でもありません。
ただの日本酒の1ファンとして、今後も私なりの表現で少しずつ紹介出来たら良いと思っております。
このコラムを通じ、少しでも多くの皆様に天寿の魅力、日本酒の魅力がお伝え出来れば幸いです。
※「R1BY」とは『酒造年度』というお酒特有の年度表記であり、7月1日を初日とし翌6月30日までの年度を、
元号と、Brewing Year (Brewery Year) の略称「BY」を使って表記されます。