【地酒コラム】はじまりは地元の酒蔵から

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2021/03/18
そこにはお酒が並んでいなかった。
ショーウィンドウに瓶は飾ってあるけれど、建物の中は閉ざされたまま。人影も見えない。
とても何かを売っているようなお店とは思えなかった。

その場所はお気に入りだった近くの公園からも目に入った。レンガの煙突。
風雨に晒された木張りの壁。漂う湯気。
そんな子供の頃の記憶を、辿ってみるのも悪くはない。

たとえば急に見通しがよくなった更地。
そこに何があったか…。
失った街の景色は意外と思い出せないものだ。それは空気みたいなものだから。
記憶の中の場所がそうなっていてもおなしくはなかった。

あったはずの公園は跡形もなかった。それすらも気づけていなかった。
ただ、もしかするとそれは、震災の影響なのかもしれない。近所のお寺は綺麗になっていたから。
その一方でお酒が並んでいない酒屋さん、
"酒蔵"は思い出と同じ場所にちゃんと建っていた。
あのレンガの煙突は記憶と同じく、青空に向かって伸びていた。

たとえば旅酒。
そのはじまりは地元の酒蔵から。
記憶の中から。